磯上のヤマザクラのある一の鳥居より道標に従い八溝古道を歩く。
八溝古道については利用目的、時代背景などの知識は皆無。
ネットで検索しても情報は少ない。
八溝山への登山は一般的に知られているのは茨城県大子町からである。
山頂には日本武尊の創建と言われる神社があり、かつては信仰の盛んな山であったと聞いている。
八溝古道は黒羽から山頂にある八溝嶺神社への参道として利用されていたと推測できる。
或いは東北地方(福島県)へと繋がる旧道の一部であったとも考えられる。
林業の盛んな八溝山域では現在も作業道として使われている様子。
序盤は新緑萌える清々しい山道を歩く。
沿道には数種類のスミレなど春の花々が彩を添える。
ショウジョウバカマの群落もあった。
やがて八溝山への道標に導かれ、沢筋を登りつめて杉林に囲まれた那須町境尾根へ。
道は思いの外明瞭で迷う不安は無い。
しかし、行けども行けども続く薄暗い植林帯の一人旅。
視線を逸らさず前方だけに集中しひたすら突き進む。
1時間も過ぎると漸く暗い森を脱出し、峠からの分岐を左に進むと眼前に八溝山らしき雄姿が現れる。
展望が開け安堵の瞬間だ。
間もなく舗装された林道に出合う。
どうやら雲巌寺方面から八溝山へと続く林道に出たようだ。
ここから山頂までの長い林道歩きを想像すると深い溜息が出てきた。
残り距離を考えると、まだ片道2~3時間はゆうに要するであろう。
往復7時間以上を要するルートであるのは事前に情報を入手していた。
今日は時間が無いので後で出直そう。
これは決して途中撤退ではない。
最初から山頂へ行くのが目的ではなかったのだから・・・そう自分に言い聞かせた。
後でネットで調べると黒羽側からは以下の様な参考ルートが紹介されていた。
☆磯上ノ山桜-本沢堰堤-那須町境尾根-十文字峠-八溝スカイライン-山頂(4時間)
黒羽側から八溝山制覇は次の機会に・・・と言いたいが、実は約30年前に10時間以上かけて歩いた事がある。
会社の新人研修で大雄寺近くの研修所から八溝山頂往復で距離にして40数km?
ただ、当時の記憶が殆ど無く、どこをどう歩いたのか覚えてないのである。
その記憶を辿ると、研修所早朝出発~里道~山道~林道~山頂~来た道を戻り夕方研修所着~倒れる。
確かそんなルートであった。
さて、ここで戻ると決まればあとは気持ちに余裕が出る。
周辺に咲くヤマザクラの写真など撮影し休憩とした。
ひたすら前方だけ見つめ歩き続けた道を帰りは散策しながらのんびり。
すると、十文字峠近くの雑木林ではカタクリの群落を発見。
花はかなり痛んでいたが最後の力を振り絞り健気に咲いていた。
驚きの発見はこれだけで終わらなかった。
間もなく驚愕の光景を目にする事となる。
薄暗い杉林の道端に白っぽく輝く花が目に飛び込む。
最初はスミレかなと思って近付くと、何とそれは可憐なイワウチワではないか。
しかも杉林の斜面に沿って大きな群落が上へと延びている!
来るときには全く気付かなかったイワウチワの群落発見に心が躍る。
しかも花に勢いがあり、まるで私が今日この日に来るのを待っていたかのように最盛期を迎えている。
そこが急斜面である事も忘れ無我夢中でよじ登った。
森の中には夢のような花の園が広がっていた。
先人も旅の途中でこんな美しい光景を眺めていたのであろうか。
あまりの素晴らしさに生唾を飲んだ。
誰も知らない自分だけのパラダイスを暫し満喫。
この秘密の花園を探すキーワードは八溝古道、那須町境尾根、十文字峠、以上である。
今回は山頂を踏めずも、思わぬ花園の発見で大収穫の山旅となった。
終わり良ければ全て良し!
ちょっと気取って、All's well that ends well!
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