「キシモト・ケイコと言います。お話したいことがあるので宇都宮城址公園でお待ちします。」


春うららかな或る日の朝、それは突然の電話でした。


声から察するに20代後半から30代前半の若い女性。


キシモト・ケイコという名に聞き覚えは無い。


 


 


 


空はどこまでも青く気持ちの良い晴天でした。


恋の予感を感じつつ宇都宮城址公園へと向かった。



 


 


 


 市民の憩いの場らしく多くの人々がウォーキングや散歩を楽しんでいる。


私は待ち合わせ場所に指定された満開の河津桜咲く広場へと急いだ。



 


 


 


周辺を見回したがそのキシモトらしき人物が見当たらない。 


するとその時、口にマスク、頭にお洒落なキャップを被った女性がこちらにやってきた。


その女性は私に向かって、「こんにちは、キシモトです。」と挨拶してきた。



 


 


 


顔が隠れているので断定出来ないが、スタイルも抜群で魅力的な美人だ。


 


 


 


 


「宜しかったら近くの喫茶店でお茶でも如何かしら?」


いきなり誘われた。


私は一瞬声に詰まったが、「ハ、ハイ!」と顔を紅潮させて返答した。



 


 


 


こんな中年オヤジに何の話があるのだろう?


少し訝しく思ったが、若い女性に誘われたことが嬉しくて疑い無くついて行った。 



 


 


 


喫茶店に入り彼女はクリームソーダ、私はアイスコーヒーをオーダー。 



 


 


 


その後彼女はキャップとマスクを取った。


美しい素顔が目の前に披露された。


長い黒髪と円らな瞳、そして艶やかな唇。


「いい女だ・・・。」


私はため息混じりに心の中で呟いた。 



 


 


 


 



 


 


 


暫くは世間話をしていたが、やがて彼女が切り出した。


「そろそろ本題に入りましょうか」


えっ、本題・・・?


私は心臓が口から飛び出るほど心拍数が上がった。


も、もしかして・・・。


急に言われても心の準備が・・・。 



 


 


 


すると突然バッグの中から何かを取り出した。


「え~、このネックレスは・・・」


彼女は一方的に商品の説明を始めた。


それはマニュアル通りの全く感情の入らないしゃべり口だ。


上の空で聞く私の耳には何も入らない。


10分も経過しただろうか?


話を聞くのが面倒臭くなってきた。



 


 


 


そこで渾身の演技力を発揮した。


「 私、中国人!」


「何いてるか(言っているか)わからな~い?」


その場を逃げるように立ち去った。



 


 


 


やばい!


スケベ根性出して来たのは良いが、もう少しでデート商法に引っかかるところだった。 



 


オヤジたちの花めぐりの旅は続く。


※そして私の妄想は益々冴える・・・。